美菜と晴香が列に並び、何事かを話しながら、弘と叶に向かって手を振っていた。
叶は小さく手を振り返し、弘はポリポリと頭をかく。
美菜と晴香が絶叫マシンに乗ったのを見て、弘はぼそりと呟いた。
「本当は乗れるんだろ?」
叶はゆっくりと弘を見やり、軽く首を振った。
「本当に苦手だよ。
晴香に合わせて乗っていただけ。
小さい頃はそうでもなかったんだけど──高いところがちょっと苦手かな」
そのまま二人の間に沈黙が続く。
弘は叶の言葉を、額面通りにとるつもりでいたようだが、まだ少し、自分に遠慮したのではないかと思っているようだった。
それを知ってか、叶は「女の子のほうが、いざってときも度胸いいよね」とのんきに笑う。
弘も、考えることは性に合わないとばかりに叶の話に乗り、相槌を打った。
「あ、そろそろ終わりみたいだね。
出口の方へ移動しようか?」
叶の言葉に、弘は無言で頷いて、ゆっくりと歩き出した。


