久しぶりに会ったいとこに、テンションが上がっているのだろう。
それを理解していても、弘の心中は穏やかでないらしい。
美菜にはまだわからない感情だが、なんとなくそんな弘は見たくなかったし、だからといって違う話題へ誘導するなんてことも出来ずにいた。
そのあと晴香が、木曜にやったドラマを話題にし、美菜もそれに乗ることでおかしな空気を払拭させる努力をした。
見ていて良かった――
美菜はそう思った。
チラチラと叶を気にしていた弘も、晴香が美菜との話題で盛り上がっているのを見て、自ら輪に入り込んできた。
叶は言葉こそ発さないまでも、終始笑顔で頷いていたからドラマを見てはいたようだ。
最初に叶と顔を合わせたときこそギクシャクしていた美菜も、晴香と話しているうちに舌が滑らかになり、共通の話題のおかげで叶へも少しずつ話し掛けていた。
叶も徐々に馴れてきたのか、ドラマから徐々に話題が移り変わったからか、弘や美菜とも会話を交え始める。
そして電車が止まった。


