引き金引いてサヨウナラ



戸惑った美菜が思わず晴香を見ると、彼女は叶に言った。


「そんなかしこまったことするから、美菜が困ってるじゃん」

「あぁ、ごめん」


あっさりと手を引っ込めて、叶は美菜と晴香に謝った。


「いえ……」


美菜は、窺うようにしながら頭を軽く下げる。からかいの眼差しで叶を指さして、晴香は言った。


「東京から来たから都会人なのよね。
両親は海外勤務が決まって、一年イギリス暮らしだって。
その間、うちに居候するの」


晴香の言葉に笑っている叶を、美菜は興味深そうに見つめた。


東京、都会、海外。


並ぶキーワードは、どれも美菜の好奇心をそそるもので。


握手に差し出した手が自然だったから、叶も海外へ行ったことがあるのだろう。


国外どころか、この街からも殆ど出たことのない美菜には、叶が眩しくみえた。


「じゃ、行こっか」


鶴の一言ならぬ晴香の一声で、三人とも動き出した。