美菜は居間を出ると、出掛ける準備を始めた。
昨日一晩考えても結論の出なかった洋服を並べ、鏡の前に立っては次々と合わせてみる。
これは子供っぽいし……
これは派手かな……
初対面の人がいるから、第一印象は大切だ。
ああでもない、こうでもない、と頭を悩ませつつ、何とかそれらしい服を合わせることが出来た。
髪を念入りにブロウし、うっすらとファンデをのせ、リップをさす。
柚江には「せっかくの若い肌がもったいない」と言われるが、美菜は、今やらないでいつやるの?と思っていた。
もし、したい化粧をしないで我慢して、出会いを逃してたらバカみたいじゃない――
それすら早いと柚江は言いたいのかもしれないが、美菜にはちっとも早いとは思えなかった。
美菜は鏡をまじまじと見つめ、少しはみ出したリップをティッシュで押さえる。
メイクで幼さが消えた顔は、だけど大人びてもいない。
幾度か角度をかえて髪型とメイクを確認し、「よしっ」と呟いて鏡の前から離れた。


