「出掛けるのか?」
達也が柚江に声を掛けた。
既にリビングを出ていた美菜は気付かなかった。
達也も美菜には届かないと知っていて、柚江に声を掛けたふしがある。
柚江もそんな二人の微妙な間を取り繕うように、大して気にとめない素振りで頷いた。
「えぇ、お友達と遊びに行くって」
「そうか」
少し残念そうな達也に、柚江は言った。
「仕方ないわよ、あの年代は。私にも覚えがあるもの。また昔みたいになるから、大丈夫よ」
柚江のその言葉に、達也はもう一度「そうか」と呟き、新聞に目を移した。
そんな達也に柚江は大きく息を吐き、テーブルの上の片付けをし始めた。


