BLACK×HEAVEN

「俺が誰だかわかるか?」



男は前のめりになって聞いた。



微笑んだ口元からは八重歯がのぞいてる。



八重歯とゆうより、牙に近い。



「だから、ここの住人なんやろ?」


「それはそうだが、もっとなんかあるだろ」


「どう答えてほしいねんな」



あたしがそう言うと、男は豪快に笑った。



何がおもろいねん。



「まぁいいや。どうせ言っても最初は信じねぇ」



もう、何なん?



コイツも頭おかしいんちゃうやろか。



「じゃあ、ここがどこかってのはわかるか?」


「わからん。さっきからずっと聞いてるやん。そろそろ教えてくれてもいいんちゃう?」



男はまた微笑んだ。



今度はバカにしたような笑いではない。



「ここは、天国と地獄の間だ。特に名前はついてねぇ」