嘆息して頭をガシガシ掻く。


「で、なんだ?」


《そだ! ……お客さん…来てるよ……》


「はい?」


《…だ~か~ら~……ぉ客さん!! …》


 もう一度聞き返す。
 何度聞いても『客』と聞こえてならない。

(おかしい……幻聴か?)

 或いはユエルの頭がおかしくなったのか。

 疑うのも無理はなかった。
 ここ数ヶ月客など、本当に影ほども見ていないのだ。
 と言うかそんな者は大体カンパニーに行くものだろう。
 街のしかも木端(コッパ)な探偵を頼る者など、それこそ木端で身近な依頼か、或いはカンパニー嫌い位だ。
 そんな者、そうは居ない。

 嫌な予感しかしない事態だ。

 しばらく紫煙をくゆらせながら考えていると、業(ゴウ)を煮やしたユエルががなった。