――最低。


その光景は、もう何年も昔のことのように感じる。そのとき頬に触れた痛みは、もう忘れてしまった。


他人の彼氏奪うなんて、最低。


目の前にいる女は私の知らない人。半分泣きそうな顔をして、それでいて怒りも持ち合わせた顔。


別れてよ。


その台詞が昼にあるドラマのように泥々とした迫力のある声で。
それでも私は怯むことはできなかった。


私が彼を選んだんじゃない、彼が私を選んだの。


その瞬間、目の前の女の手が降り下ろされた。
高校1年の、15歳の春だった。




――