その声を聞いた瞬間、電話を切ろうとした。


だが、その行動は彼にあっさり読まれていたらしく。


『ちょっと待った! 切るとかナシ! 無言で切るとかナシ!』


「……何よ、こんな遅くに」


『こんな遅く、の割には電話を取るのが早かったね?』


「……切る」


『わー! だから待てって! どうせ眠れないんだろ?』


電話越しで図星をつかれ、無性に悔しくなった。


何も言わない私の反応を察して、それを確信したのか優しい声色で話した。


『お話するのと、あの花畑で会うの。どっちがいい?』


そう2つの選択肢を出されて、私は小さな声で答えた。


「……花畑」


本当は花畑、なんて呼べる場所ではないけれど。


それでも彼があの場所を花畑、と呼んでいることがすごく心地よくて。


昔のまま、残っているような。


昔、綺麗な色の花々が咲き誇っているんじゃないかと、淡い期待をさせる。


結局はそんなことないのだけれど。