そして、あの夜家に帰ってしばらくすると、碧からメールが来ていた。
彼はあろうことか、私の携帯に勝手に自分のアドレスを登録していた。
……本当、ありえない奴だと呆れた。
まあ、その夜からメールは特に来ていないからもうどうでもいい話しなのだけど。
「……手、離しなさいよ」
「ん? だめ。葉月は逃げちゃうから」
けらけらと笑う態度とは裏腹に、碧は一層手に力を込める。
まるで、『離さない』と言われているような気分だった。
……本当のことを言うと、こんな手、いつでも振り払える。
ユウキにしたみたいに、力任せに振り払えばいいんだ。
なのに、彼はそうさせない。
『逃げちゃうから』と笑っているが、きっと彼は真面目にそう思ってる。
そして私も、そうしようと思っていた。

