ユウキの姿が完全に見えなくなったとき、碧はやっとくるりと振り返った。
「行こっか」
振り返った碧はいつものように涼しい顔をしていて、まるで何事もなかったようで拍子抜けしてしまった。
そして、さも当たり前のように私の手首を掴み、そのまま歩き出した。
「ちょ……、ユウキは……」
私が焦って碧に言うと、ピタリと足を止めた碧の背中にぶつかりそうになった。
「ちょっと、いきなり止まらないでよ。危な……」
「アイツのどこがいいんだよ?」
その言葉に私は眉をしかめる。
くるりともう一度碧は振り返ると、にっこりと微笑んだ。
「アイツよりも、俺の方がイイ男なのに」
めかして言う碧に、肩頬だけ上げた。
「馬鹿じゃないの」
「……ま、そう言うと思ったけど。あんな奴に引っかかんなよ」
――あの夜から変わったことと言えば。
私は『碧』、碧は『葉月』と当たり前のように呼び合うようになったこと。

