「葉月らしいね」


彼はそう言い、私の額に軽く触れるだけのキスをした。


このキスにどんな意味があるのか、私は知らない。


ただ、その温もりがどうしようもないほど苦しいことは事実。


「明日も学校だから、もう寝よう。おやすみ」


優しく私の頭をなでる手の温もりが離れていく。


このまま寝てしまえばいいのかもしれない、と思うよりも先に自分の手が彼の手を追いかけていた。


突然、手を握られた彼は控えめに目を丸くして私を見た。


「…やだ。まだ寝たくない」


「じゃあ、お話ししようか?」


まるで幼い子供に話しかけるように彼は言った。


その言葉に、私も幼い子供のように頷いた。


表情も、声色も変えることもなく。