「……何で?」

優は驚きを押さえきれず上擦った声を出した。問い掛けたというより、思わず口をついて出たという感じだった。

「優君と同じだから」

そんな優の驚愕をよそに、事も無げに空也は軽い口調で答えた。

「僕と……同じ?」

「そう。優君と同じ覚醒者」

にこやかに言う空也の言動から何か読み取れまいかと、優はジッと彼を見据えている。

「覚醒者?」

「そう、覚醒者。選ばれた人間達」

鸚鵡返しに言葉を発する事しか出来ない優に対して、空也は安心させる様に一言一言丁寧に喋っている。

「選ばれた…僕が?」

「そうだよ、優君は選ばれた人間なんだ」

普段から自分自身の存在意義を計りかねていた優にとって、その言葉はある種の衝撃と心地良さを伴なって耳に飛び込んできた。

ひび割れた大地に水が入り込んでいくが如く、心の中にスゥーっと入りこんできた、そんな感覚だった。

「優君は選ばれた人間だよ」

呆然としている優に言い聞かす様に、空也はゆっくりと同じ言葉を繰り返した。

ジッと目を見詰めてくる優を満面の笑みで見返す空也。

「……前田君も覗けるの、人の心を?」