すごくムカついた。



なんであたしを捨てて、他の女の所に行ったんだって毎日そんなことばっかり思ってた。



……でもあたしには、どうすることも出来なかった。



拓哉はあたしと別れてから、前よりも荒れてた。



毎日ケンカばっかりして、先生に怒鳴られて。



停学処分を受けて、自宅謹慎になって。



それでも毎日派手にケンカしてた。



……だからあたしには、どうすることも出来なかった。



だけどあたしはそこまで頭が回らなくて、自分のことだけで精一杯だった。



事実を知ってから、自分のことしか考えてなかったあたしは……他人のことまで考える余裕がなかった。



確かにあたしも悪かったのかもしれない。



拓哉をあんな風にしたのは、他の誰でもなくあたしだから。



あたしにも責任がある。



もしあの時、あたしが妊娠したことを拓哉に話さなかったら……あたしたちはきっと今も一緒に居られたかもしれない。



あんなに辛い思い、しなくて済んだのかもしれない。



でもあたしは、拓哉と居るのがすごく辛かった。



顔を見るだけでも辛かった。



拓哉の顔を見たら、あたしは余計に辛い思いをするから。



だから……別れてから一度も拓哉の名前を出さなかったし、拓哉の顔も見ないようにした。



もしどこかで逢っても、絶対に話さない。



……そう決めたんだ。



だから高校受験の時も、あたしはあえて外部受験を選んだ。



本当は地元の高校に行きたかったけど、辛いことを思い出したくないから、わざわざ遠くの高校を選んだ。



でも外部受験を選んだ一番の理由は、拓哉の側から離れたかったら。



いつまでも拓哉の側に居たら、あたしはきっともっと惨めになる。



もう一度、一から自分をやり直したい。



そう思ったから、わざわざ"外部受験"というのを選んだ。



でも……そのおかげであたしは、こうして最高の幸せを掴むことが出来た。


だから今は拓哉を憎んでないし、一人の人間として拓哉の幸せを心から願ってる。