「……え?」



美綺?なんだよいきなり。……頭下げて。



「お願いします。……子供を生ませてください。……嫌われてもいい、別れてくれてもいいから……子供だけは、子供だけは産ませてください」



「美綺……顔上げろって…」



俺がそう言うと、美綺は顔を上げた。



その目には、たくさんの涙が浮かんでいた。



「……美綺」



そっと名前を呼んだ。



「いきなりごめんね……変なこと言って」



そう言った瞬間、美綺の目から大粒の涙が零れ落ちた。



ギュッ



俺は気が付けば、美綺を力一杯抱き締めていた。


「……流二」



「嫌う訳ねーだろ……別れる訳ねーだろ。……なに言ってんだよ」



俺はそう言って美綺の頭を撫でた。



「だって……前みたいに、"堕ろせ"って言われるのがイヤだったから…」


美綺が俺の胸の中でそう言った。



「アイツと一緒にすんなよ。……俺はお前が好きだから……愛してるから、お前の側に居たいんだよ。だから……そんなこと言うなよ。"堕ろせ"なんて言わねーよ。"嫌い"なんて言わねーよ。……"別れる"なんて絶対言わねーよ」



俺はそう言って、抱き締める更に力を強めた。



「うん……じゃあ……嫌いにならないで居てくれるの?」



美綺は掠れた声で言った


「……当たり前だろ?」


俺はニコッと笑った。



「流二……ありがとう」


美綺が小さな声で呟いた


「ああ……俺こそ、ありがとな」



俺はそう言って美綺の肩を掴むと、美綺をジィーッ見つめた。



「……え?」



「子供産んでくれるって言ってくれて。……俺、すっげー嬉しかった」



俺はそう言って優しく微笑んだ。



「……うん。あたし、頑張るね」



美綺はそう言って下を向いた。



美綺を見ると、ほのかに顔を赤くしていた。



俺はそんな美綺が愛しくて、また美綺をギュッと抱き締めた。



美綺は俺の胸に顔を埋めて、背中に手を回した。