「……入って、いい?」


美綺が母親に聞いた。



「ええ、どうぞ。入って待ってて。今お茶淹れて来るから」



美綺の母親はそう言うと、ニコッと微笑み俺たちの前から居なくなった。


「……入って」



美綺はその一言だけ言うと、家の中へと入って行った。



俺もその後に続いた。



美綺は玄関でスリッパに履き替えると、リビングの前に立ち扉をゆっくりと開けた。



すると今度は、美綺の父親らしき人が読んでいた新聞紙から顔を上げて、俺たちを見た。



「おっ、美綺じゃないかいきなりどうしたんだ?帰って来るなら電話してくれれば良かったのに」


その言葉から美綺の父親だと察した。



「うん……今日はね、彼氏連れて来たんだ。お父さんたちにまだちゃんと紹介してなかったから、紹介しようと思って…」


美綺はそう言うと、俺をリビングに入れた。



「おっ、君が雨宮君か?美綺の父です。よろしく。いつも美綺がお世話になっているみたいで…」


美綺の父親はそう言うと、優しい笑顔を向けた。


「初めまして。……雨宮流二です」



俺はそう言うと、軽く頭を下げた。



「いや、美綺に彼氏がいるのは知っていたが、こんなにカッコいい彼氏がいるとは、感心だな」



美綺の父親はニッコリ笑うと、嬉しそうにそう言った。



「でしょ?あたしの愛しの王子様なんだーっ」



美綺はそう言うと、俺の腕にしがみついた。



「ほう……まぁ、取り敢えず座りなさい」



「うん。流二行こう?」


美綺はそう言うと俺の手を掴んでソファーの所に行った。



俺は美綺の隣りに座る形となった。



でも改めて言われるとちょっと恥ずかしくなる。


"愛しの王子様"って言葉に…。



すると、今度は美綺の母親がお茶とお菓子などを持ってニコニコしながらやって来た。



そしてそれを俺たちの前に置くと、またニッコリ笑って美綺の父親の隣りに腰掛けた。



そして優しい笑顔で俺たちに聞いてきた。



「珍しいわね。美綺がいきなり来るなんて」