「吉村に謝っておかなきゃならないことがあるんだ」

おずおずと朝倉が切り出した。

「あの高2の秋、お前と…宮原が別れさせられたことが学校中に広まってたじゃん?」

テーブルの上で手を弄びながら、彼は言う。

「実はあれ…俺のせいなんだ。俺がクラスのやつに、うっかり話しちまったんだ」

虚無的な気持ちで、僕は朝倉の告白を聞いていた。

別に意外でも何でもなかった。あの日から気付いていた。僕と唯の関係を知り得たのは、彼以外にいなかったからだ。

「すまん」

テーブルの上にドンと両手をつき、頭を下げる朝倉。

「もういいよ」と僕は言った。

「さっきも言ったけど、もう3年前の話だ。もともと、僕たちが軽率だったんだよ。それに…」

「それに…?」

「…いや、何でもない」

高校時代の朝倉の気持ち。

あの「めいわくかけんなよ」のメールに込められた彼の気持ちを、僕はわかっていたのだから。