カウンターの奥から、バタバタと朝倉が出てきたので、僕は回想をやめた。

相変わらず、外では雨が降り続けている。

店の前のビニールの日よけから、雨水がボトボトと流れ落ちていた。


僕の前に戻ってきた朝倉は、新しいカフェオレを作って持ってきていた。

「おごりだ」と言い、彼は僕の前にトンとグラスを置く。

「いや、いいよ」

「遠慮すんな。もうちょっと話をしようぜ」

「…」

僕を見つめる朝倉の目が、いつになく真剣だったので、

「じゃあもらうよ。悪いな」

そう言い、僕はストローをグラスに差し込んだ。

微妙にさっきよりも苦い味だった。その苦さが、僕の心のエントロピーを下げるのに丁度良かった。