廊下を歩きながら、僕は唯との交際がバレたのかな、と考え、気が重くなった。

職員室に入ってすぐ右、擦りガラスのドアで隔てられた『生徒指導室』というものがある。簡単に言うと、悪さをした生徒が油を搾られる部屋だ。

室内には小さな机が置かれていた。入り口と反対側に座っている人間が2人いる。

1人は、宮原唯。ピンク色のタオルを顔に押し当てて嗚咽している。

もう1人は、唯の父親だった。部屋に入ってきた僕の顔を見て、眉毛をピクリと動かした。

鉄の塊を飲み込んだような気分を感じながら、僕は椅子に着いた。

松尾先生が、机の横で立ったまま話し出した。

「吉村、うちの高校で男女交際が禁止されていることは知っているな?」

はい、と僕は答えた。

「こちらは宮原さんのお父さんだ」先生は続けた。「宮原唯さんから確認を取った。校則にのっとり、お前たちの関係を…そうだな、破棄させてもらう」