2月には、
夜勤独り立ちしたわけです。
1月に、
4回ほど、
椛田さんや碧さんについて、
夜勤見習いして、
独り立ち。


碧さんに、
夜勤前に再三言われた。

「僕ちゃん!!
バイトさんに負けちゃだめよ!!」

碧さんは、
俺を僕ちゃんと呼ぶ。
俺にはなんのこっちゃ分からんかった。


初夜勤日。
病棟に行ったら、
モニターが光ってた。
何を意味するのか。

「この人やばそう?」

「あぁ、今夜が山だね。」

状態がやばくなると、
だいたいモニターを取り付ける。
テレビとかで、
”ピッ、ピッ、ピッ”
とか、
音出して、
心臓の動きを線で映し出すあれ。
実際は音しないけど。

俺はハラハラ。

今日の夜勤メンツは、
お局さんがいる。
この頃俺結構苦手だった。

「あら、
今日初夜勤なんですの?
よろしくお願いしますね。」

って、
三井さんに言われたけど、
目は笑ってない。
上品なお話の仕方に、
見合わない毒舌を時々吐く。


「…よろしくお願いします。」

俺ハラハラ。
モニターの波形がおかしい。
これ絶対死ぬ。

亡くなる時って、
分かるって言うけど、
分かると言うより感じる。

俺はこの時は、
まだそれが出来なかったけれど。

こんな言い方はよくないけれど、
死相が出る。
そして、
匂いが変わる。
独特の、
今際の際に出るにおい。
人が、
朽ちていく匂い。
その人は、
夜中、
息を引き取った。