ディアスが司令室を出たころと同じ時,レイもすでに城内にいた。 右も左もわからない城内をあてもなく走る。 普通なら真っ黒な服を着たいかにも怪しい人間が城内を歩いていれば大騒ぎになるだろう。 しかし今はそれどころではない。城内の兵士は使用人の避難や怪我人の世話などで忙しく,レイに気づく人間はひとりもいない。 そんな人ごみのなかレイは見覚えのある後ろ姿を見つけた。 少しウェーブのかかった金髪の長い髪。大勢の群集の中を颯爽と歩くその姿。 レイがずっとずっと追い続けた背中だった。