ユイの通う中学校でもそのメールの謎は話題に上りました。

 「昨日も来たね~」
 
 「読んだ?」
 
 「最近のは全部読んでるよ」

 「私も、加奈子の影響でさ~」

 「あの子、超ハマってるよね」

 「でも、読んじゃう気持ち分かるな~」

 「私も最初は気味悪くて削除しちゃったんだけど、最近はね」

 「削除しちゃたの?」
 
 「うん、一、二章を」
  
 「えー! 全章集めないと死んじゃうらしいよ?」

 「マジメ!? えっ、転送してくんない?」


 ……こんな奇譚(きたん)が若者達が集まる所から、いくつも生まれました。
須らく、それらは根も葉も無い、おとぎ話でしかありません。



 しかし『ゼウス・サイン』はこうした若者達の好奇心を依代(よりしろ)として、社会を飲み込む大きな潮流へと育ってゆくのでした。