美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!

〔ブゥゥゥン、ブゥゥゥン!〕

 ユイの一度落ち着いたハズの動悸が、鯉の滝登りを思わせる力強さと突発性で一挙に高鳴るのでした。

 ドックン…ドックン…!
 (どうしよう…?)


 〔ブゥゥゥン、ブゥゥゥン!〕
 容赦なく、低い振動音が続きます。

 さて、ここで大切なのは我々にとっては
 「果たして何故、ユイがこれほどまでに電話に対して執拗に意識を置き、破滅を連想するのか」
 というのを、全く理解できない点です。


 (どうしよう…)
 それは、ユイが彼女の人生の主人公として、第三者的な理屈(シナリオ)ではなく、彼女自身の直感(アドリブ)で、生きとし生きる権利と勇気を有しているためだったのです。

 
 〔ブゥゥゥン、ブゥゥゥン!〕
 一方、対極的に……!
 “自分の人生への権利と勇気を放棄”する代わりに…
 南竜一は最大の絶望と力を得ていたのです…!


 〔ブゥゥゥン、ブゥゥゥン!〕
 
 「とらなきゃ…!」
 ユイは人生の主人公として、“ちゃんと”恐怖しながら、“ちゃんと”勇気を出して裕の携帯電話に……
 “運命の電話”に手を伸ばしました。
 
 「…もしもし?」