「…どうしたの? 気にする事はないよ?子は親を殺す権利を有しているんだからね。
 “人のあるがままの才能”として、君は持てる感情を入力しただけなんだから。 そう世界に入力しただけ…」

 しかし達也は首を振り続けます。

 「おいで。僕と一緒においで…ここに居ては必ず見つかる。また誰か大人が君を捕まえに来るんだよ」

 竜一の台詞に策謀的な部分が無いとは言いません。しかし言葉の大部分は紛れもない慈悲でした。

 「いや!出てけ!」
 けれど竜一の言葉は彼には届きませんでした。
 再び差し伸べられた竜一の手に達也はおののき身を引いたのです。
 「やだ…やだやだやだやだ… ビ…ビデオビデオビデオ…」

――!?
 「落ち着くんだ、達也くん」
 しかし達也はうろたえるばかりで、何を返事するワケではありませんでした。


 ………と、
 【闇が全てを隠すっていうのは…まぁ、ウソだね……】
 それは、『光竜』の言葉でした…!
 まさかの突然の目覚め。
 強烈な憎悪に目と口が生えた…と表すれば良いのでしょうか。まさに、心を抜け出して独り歩きを始めた感情が自我を持った瞬間です…!

 「な、光竜!?」
 竜一と『雷竜』はとっさに臨戦体勢をとりました。

 【“影がモノの輪郭を創る”んだろうが…】

 「『光竜』…何を言ってる…!」

 「…デオビデオビデオビデ…」達也はまるで、悪心以外の感情までも『光竜』に喰われてしまったかのように、ただ錯乱を続けていました。

 「達也くん!落ち着け!光竜を止めろ! 僕は味方!味方だ!」
 と、竜一が叫ぶものの、心の殆どを空にした達也は、あたかも糸の切れた凧のように御せる様子ではありません。