終章
 ~DIAMOND RAIN~
 第三節
  ~アナタが、
     生きていく世界~ 

 「あぁぁ…! うっ…うっ…」
 ユイは泣き続けていました。

 
 このエピローグに至ってもなお、私には、少女の気持ちを精緻に表現する事はできません。いえ、少女の涙の理由を嘘を用いないで言葉で表現する事は、どんな文豪にも出来ない事なのです。
  なぜなら、『言葉』とは口にした途端、世界の邪悪に歪められ1%の気持ちも伝える事が出来ない不完全なモノだからです。まるで木炭車のエネルギー変換効率みたいなものです。
 
 だから、もしアナタが言葉を言葉として捉えているのなら、アナタの生きる世界のほとんどは、無意味と嘘でしかありません。
 世界に残された一縷の真実とは、アナタ達(読者の皆さん)が自分の心で想像し、創造するしかないのです。
 ……少年が言ったように…
 他人の心を想像するしか、この世界に幸福は訪れないのです。
 
 
 「あぁああ……!」
 ユイの涙は枯れる事を忘れていました。
 
 しかしたとえ言葉で表現できなくとも、この無垢な少女の気持ちが如何なるものだったのかを“物質的に描く事”はできそうです。
 「なぜ」って? なぜなら……
 “感情”を世界に出力する“竜”という存在が、この物語には居たからです。


  

 ここからは、少女と少年の、最初で最後の、心の、交わりの、エピローグ。
 
 …………
 ………