美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!

 虐待の記憶――!
 
 (そうだ、これは父親だった男への憎しみと恐れなんだ…)
 
 美奈子は物理的な痛みへとその感情を転換するためか、自らの左腕を噛み、その心へと流れ込む怒涛の感情に耐えるのでした。
 
 しかしそれは、大人になった堅牢な心ですら、容易く瓦解させるような狂気の大津波だったのです!


 記憶。
 人間は思い出せないだけで、かくも精緻に全てを憶えているものなのでしょうか?

 “その晩”の夕飯なんだったのか、そしてそれがどのような味だったのか。

 “その晩”に見たテレビ番組は何だったのか。

 “その晩”被っていた毛布の感触までも……

 彼女は全てを憶えていたのです。

 「忘れてたのに… ねぇ、お願い………」


 「目を逸らすなんて、させない」と、竜一。
 「力を得た理由と、そのときの出来事。 “その晩”君は……」
 
 
 「そうよ、あの男を!!」
 美奈子は回りくどい竜一の説法と、狂気に早くも屈したのでした。

 「あの男を……!  あの男を殺そうとしたのよ!!」

 
 そう“その晩”とは、少女が『闇竜』に捕らわれたときの話……。