美少女戦士 イグニス・ドラグーン・ユイ!

 時の凍てつきを想像させる沈黙を破った少女の一言は、至極、“日常的”なものでした。

 「痛っつつ……。 エヘヘッ…“間違えた”な」
 と、彼女は立ち上がったのです。


 張本人の竜一少年ですら“裁定”を黙して受け止める段にあって、ユイのその言葉は燦然としたものでした。

 間近でその言葉を聞いた美奈子は意味もなく
 「ユイちゃん!?」
 と言うほかにありません。


 「“間違えた”。私ってバカだのなぁ…」
 そう言って微笑むユイは、しかし辛うじて立っている状態でした。

 負傷した右手はダラリと伸び、細い胸骨を守るべき『ドレス』はボロボロで……。
 
 ……それでも、ユイの唯一動く左手は強く握り拳を作っていたのでした。

 「ユ…イちゃん?」
 その拳に気付いた美奈子は涙ながらに首を振りました。
 「うんうん、もう…いい。もうやめようよ。 …だって――
 
 ――だって

 どうしてこんな少女一人が世界中の無思慮(を吸った化け物)と闘わなくてはならないというのだろう?
 なぜ、アナタ達は見ているだけで何もしてくれないのだろう?
 なぜ、自分達に救われる資格があると思えるのだろう?
 何もしてあげないのに?
 
 【アナタ達を暗闇へ追い詰める元凶は、アナタ達の少しずつの無思慮だというのに!】