けれども不幸は重なり、
――それは美幸さんがしたように感情剥き出しのどんなに拙い告白でもよいのですが――
彼には告白する相手も、そして器量も持ち合わせていなかったのです。
彼は、ますます自分を貶め、追い込み、ますます『ドラグーン・オブ・ザ・ライトニング』の力を強めていくのでした…。
――――
――…
「……竜一」
このところ、以前にましてますます生気を失い、眼光ばかりが厳しくなっていく竜一に、彼の母親は怯えに近い感情を抱くしかありませんでした。
封建的な旧家の箱入り娘と育った彼女が、ある一定量の他人を抱する力を持たない事は頷けますが、それでもやはり、彼女は母親であるべきなのです。
常日ごろ余所余所しく、病んでいく息子の様を知ってもなお
「き、期末テストの勉強はどうかしら?」
などという一枚皮な会話で誤魔化そうとなど、するべきではないのです。
「うん、大丈夫…」
竜一は失望と同時に、彼女の足りない部分を理解し、優しく微笑んでやったのでした。
「お休み、母さん」
「……お、おやすみ」
母親は結局、それ以上なにも言えず、退散する他無かったのでした。彼女は15年経っても、そして自分で育てておきながら、竜一という人物が分からなかったのです。
その余所余所しさは、どこか、初産のパンダの母親を想像させます。自分とは似ても似つかないピンク色の奇形な赤ん坊に、戸惑いそして怯える“人間に育てられた哀れなパンダの母親”でした。
――それは美幸さんがしたように感情剥き出しのどんなに拙い告白でもよいのですが――
彼には告白する相手も、そして器量も持ち合わせていなかったのです。
彼は、ますます自分を貶め、追い込み、ますます『ドラグーン・オブ・ザ・ライトニング』の力を強めていくのでした…。
――――
――…
「……竜一」
このところ、以前にましてますます生気を失い、眼光ばかりが厳しくなっていく竜一に、彼の母親は怯えに近い感情を抱くしかありませんでした。
封建的な旧家の箱入り娘と育った彼女が、ある一定量の他人を抱する力を持たない事は頷けますが、それでもやはり、彼女は母親であるべきなのです。
常日ごろ余所余所しく、病んでいく息子の様を知ってもなお
「き、期末テストの勉強はどうかしら?」
などという一枚皮な会話で誤魔化そうとなど、するべきではないのです。
「うん、大丈夫…」
竜一は失望と同時に、彼女の足りない部分を理解し、優しく微笑んでやったのでした。
「お休み、母さん」
「……お、おやすみ」
母親は結局、それ以上なにも言えず、退散する他無かったのでした。彼女は15年経っても、そして自分で育てておきながら、竜一という人物が分からなかったのです。
その余所余所しさは、どこか、初産のパンダの母親を想像させます。自分とは似ても似つかないピンク色の奇形な赤ん坊に、戸惑いそして怯える“人間に育てられた哀れなパンダの母親”でした。


