「やれやれだわ…」
 眼前に広がるガラス扉越しの図書館の暗闇に対して、美奈子はクールに呟きました。


(まったく、私はどうして“あんな事”を言ってしまったのだろう…)

 そんな風に考えると、美奈子は悔恨してしまいそうになりましたが、首を二、三回振って気を正しました。

(…いや、ともかく…。可哀想な“彼”はココ(図書館)にいるんだ…!)

(美奈子…男の事はひとまず忘れなさい…)

(これは私しかできない事…。見捨てるワケにはいかないのよ…!)


 ちょうど空の高い所では煌々と輝く満月と暗雲が激しく鍔迫り合いを繰り広げていました。

 それはまるでこれから始まる“光と闇”の激突を、暗示しているかのようでした。


 「さぁ……行くわよ、闇竜…!」