そんな心情を追い払うように、麻紀はグラスワインに口をつけた。
気持ちを落ち着かせようと辺りを見渡すと、白壁に何やらモザイクタイルが敷き詰められている。
何かの模様だろうか。
「あれは、なに?」
不意に口をついて出た言葉に、小菅は瞬時に反応した。
「あぁ。あれは、ナポリの象徴・ヴェスヴィオ火山のモチーフです」
「へぇ。あの有名なヴェスヴィオ火山……」
小菅の話によると、店主の西川さんが、年四回現地を訪れ、モザイクタイルやテラコッタの床などを仕入れてくるらしい。
「さっ、それより料理をきめましょうか?渡辺さんは、苦手なものとかありますか?」
「ううん。特にはないわ。小菅くんに任せるわ」
「わかりました。じゃ、僕が適当にオーダーさせてもらいますね」
コクンと頷くと、小菅はメニューリストを眺め、慣れた様子でオーダーしていた。


