「ここ、座ってもいいですか?」 「えっ?……えぇ。どうぞ」 男はテーブル席から、麻紀の座るカウンター席へと席を移動した。 堅くなっている麻紀に、男は穏やかに微笑み、タバコに火を点けた。 タバコを持つ男の指は、しなやかで長い。 男は、今日もポール・スミスの粋なスーツを着ている。 真夏なのに暑さを感じさせず、スーツを涼しげに着こなす彼に、相澤と同じような「大人の男」を感じさせた。