仕事帰り、麻紀は行きつけのバー『サザン』に立ち寄った。 小菅の誘いを振り切り、彼が外回りで社外に出ているうちに帰社した。 たまには、一人で飲みたい気分のときもある。 「いらっしゃいませ」 心地よい音色を奏でるピアノの生演奏と、気取らないマスターが麻紀を優しく迎えた。 「こんばんは」 まずは、グラスワインとチーズの盛り合わせを注文した。 ワインが運ばれ、グラスを傾けながら、麻紀は溜め息を一つついた。