不機嫌な果実



そんなこんなで、数時間前の麻紀は、伊豆の高級旅館でさながらドタバタコメディを披露した。


社内では『仕事のできる女』と称された麻紀だったが、今回の件で一躍『時の人』となってしまった。


そして、今は東京のマンションに戻り、旅の疲れを癒そうとソファで寛いでいる。


いつもなら一人だけど、今夜は違う。


膝枕の上で、ちょっかいを出す子犬が一匹。


子犬が餌をねだるように体を吸い寄せ、おかわりのポーズ。


「ダーメ!もうお腹いっぱいでしょ?もう寝るわよ!」


それでも、体を密着させてくる。


「こらっ!」


子犬は麻紀のお腹の上に乗っかった。


「まったく聞き分けの悪い子ね」


そう言いながらサラサラの頭を撫でた。


お腹の上でおとなしかった子犬が急に頭を上げ、澄んだ瞳でこちらを見つめている。


「ん、どうしたの?」