マリーのことを話している間、小菅は時おり相槌を打ちながらじっくりと話を聴いてくれた。
「マリーは渡辺さんのこと、恨んでなんかいませんよ!寧ろ感謝しているはずです。
だって、ペットショップで自分を見つけてくれて、渡辺さんの家で10年もの間、幸せに暮らせてたんですから。ね、そうでしょう?
ちなみに僕は犬が苦手ですけどね」
クスッと小菅は笑った。
「どうして?」
小菅が犬を苦手としているなんて、初耳だ。
「五歳のときに噛まれたんですよ、ここを!」
お尻をガブリと噛む真似をする小菅が可笑しくて、涙目の麻紀にも笑みが零れた。
「痛かった?」
「そりゃもちろん!しっかり歯形の跡が残っていたし」
「えー、そうなの?……じゃあ、今も?」
「まさか!でも僕、戌年なのに噛まれたんですよ。おかしいと思いませんか?」
「ほんと。不思議ね」
もう麻紀の目に涙はなかった。
ずっと心に溜まっていた重石のようなものが、数年ぶりに麻紀の心から離れていった瞬間だった。


