不機嫌な果実



見上げると、研修でいつも厳しく指導している渡辺ではないか!


普段のキリッとした雰囲気からは想像しがたい間抜けな絵面。


この人、案外、面白いかも?と思った瞬間だった。


それから数ヶ月後のことだった。


またしても、偶然、渡辺を見かけたのだ。


得意先に行く用事があり、乗り換えの駅で下り電車を待っているときだった。


朝のラッシュアワーとあって、人でごった返す駅構内で明らかに逆走する渡辺は、反対ホームにいる小菅から見てもかなり目立った存在だった。


「何やってんだ、あの人」


渡辺を目で追っていた小菅の目に映ったものは――。