不機嫌な果実



「ちょっと僕の話をしてもいいですか?」


「……えっ、うん」


そう言われるや否や、麻紀の手は瞬く間に小菅の手に繋がれ、指を交差された。

五本の指から、じんじんと小菅を感じる。


やだ……どうしよう。


あたし……緊張してるかも。


落ち着け、落ち着け――麻紀は呪文のように心の中で繰り返した。


「本社に来る前、僕がまだ新入社員の頃の話なんですけど、渡辺さんと会ったことがあるんですよ。覚えてますか?」


「――は?嘘、会ったことなんてないわよ!」


「ガッカリ。やっぱ覚えてなかったんだ。マジで凹むなぁ。結構、アピールしてたんだけどなぁ」


小菅は身体を大きく仰け反り、大袈裟に落ち込んだ素振りを見せた。


「何、どういうことなの?さっぱりわからないわ」


本当に何のことだか、麻紀には分からなかった。


「新入社員の研修会は例年グループ会社を含め、本社でやっていますよね。それに僕も参加していたんですよ」


「えっ?あの研修会に?」