人前ではベタベタしない二人も同期と別れ、麻紀のマンションにタクシーで戻る頃には、普通の若い男女になっていた。
肩を抱かれた麻紀は、ミラー越しに映る運転手を気に留めるわけでもなく、相澤の胸に顔を埋(うず)めた。
スーツから放たれる、相澤の匂いとBVLGARIの香水とが鼻をくすぐる。
麻紀には、それが心を落ち着かせる精神安定剤のようだった。
ずっとそばで嗅いでいた、この香りが…好き……。
弘樹が…好き……。
頭の中で呪文のように唱えた麻紀は、相澤に身を預けたまま家路へ向かうタクシーの心地よい揺れに身を任せた。


