「さく~」
「っ、またその呼び方で呼んだら一生あなたに関わらない!」
「っ!、ごめんって」
‘さく’なんて呼ばせない。
呼ばれたくもない。
先輩のこと思い出しちゃうじゃない。
‘さく’ってもう一度先輩の声で囁いてほしい、そう思うから…
「二度と呼ばないで!!」
「わかったよ。で、今日は?」
盛大なため息をこぼす。
まだその話題だったのかと、頭を悩ませる。
コイツにはそんなことしか考えられないのかと、見下してしまう。
「わかった。あんたん家ね」
これが何を意味するのか。
これがいいことなのか。
わたしは感覚が麻痺ってしまった。
「っしゃ、さくら。今から行くぞ!」
そう腕を引っ張られて彼の自転車の荷台に乗せられる。
落ちないように運転する彼の腰のあたりに腕をまわすと、優しく笑い自転車を走らせる。
「ハル…ハル…」
「ん?なに?」
「ごめんね」
「…、謝んな」
「ん」
これが何を意味するのか彼には分かる。
これがいいことなのか、はっきり言うが、これは良くない。
わたしは自分がされて嫌だったことを彼にしているのだから。