洗面所のドアが開く音、廊下を歩く音、音が近づくにつれて緊張の音はわたしの中心で激しさを増す。


『サク?』


『はっははは、はいっ』


緊張で上擦る声にも恥ずかしさを覚える。


そんなわたしとは対称に落ち着きはらった先輩はクスクスと笑っていた。


でもすぐに先輩から視線を反らした。


上半身は何も着てなくて、肩にタオルが無造作にかけられているだけ。下はちゃんとジャージを着ている。


いつももっとギリギリの水着姿を見ているのに、いつもと違う雰囲気で、いつもと違う気持ちだからか、そんな先輩の姿がかっこよくて、恥ずかしい気持ちになる。


『シャワー浴びておいで』


その言葉に体が素直に反応して勢いよく立つと、先輩の姿をあまり視界に入れないようにそそくさと洗面所まで向かった。


とりあえずそのお風呂にあった石鹸やシャンプー類を使わせてもらって、徹底的に洗った。


いつもはこんなにしないじゃんってくらい丁寧に洗った。


身体中から先輩の匂いがして、それだけで恥ずかしくなる。先輩に包まれてる気がする。


そんなバカなことを考えるのは変態だからなのかなって本気で考えてしまうし、今一番気がかりなのは、どうやって先輩の前まで行こうかってこと。


どうって、それは歩いて行くんだけどって、そうじゃなくて、どんな格好すればいいのか分かんない。


裸? いやいや。

バスタオル一枚? いやいや。

下着姿? ノーノー。

さっき着てたの着る? どうせ脱ぐのに?


えぇい!女は度胸だ!



『…先輩』


わたしの声に振り向く先輩。少し驚いたように目を見開く。でもすぐに穏やかに笑って、ベッドに腰をかけたまま手を差しのべてきた。