先輩の部屋には似合わない赤。


先輩の反対の手にもマグカップが持たれていて、それは黒を基調としていたものだった。


先輩…このカップは…


聞いてみたい。


だけど、聞きたくない。


聞いたら最後。


自分が悲しくなるだけ。


聞かなくても分かる。


これは、これは…


きっと…。


『ありがとう…ございます』


あの女の人のもの。


カップを持つ手が震えそうだ。