<side:ハル>
茜とは大学入ってすぐの頃に出逢った。
気づいたらそういう関係になってて、茜が俺に好意を抱いてるのもなんとなく気づいてた。
だけど、茜にいつも聞かせられる“さくら”って子の方が気になっていて、多分恋してた。
まさか、さくらっていう名前しか知らない子を好きになるなんて思ってもみなかったけど、これが直感っていうものなんだと思う。
3回生の春、さくらと出逢った。
さくらは俺が想像してたよりもちっちゃくて守ってやらなきゃって思ってしまった。
それにさくらには好きなヤツがいて、そいつのことをずっと想っていたんだ。
そいつのことは知ってる。
茜からも聞いていたし、何より、さくらを抱いてるときはずっと“カイト先輩”って呼ばれてるから。
それでもいいって言った。
身体だけなんだから気にするなって。
だけど、限界なくらい心が悲鳴をあげる。
俺を見てほしい。
俺の名前を呼んでほしい。
そんな自分勝手な欲をさくらにぶつけてしまったんだ。
そんなある日、茜が俺のとこにやってきた。
俺はさくら一筋になりたい。
この先、さくらを守っていきたい。
だから、茜との関係、他の女との関係を切っていっていた。
そんな最中だった。
茜とは3年目だったし俺をすきなことも知っていた。
だから中々思うようには話が進まなくて困ってたんだ。
茜が来ても答えは同じこと。
それに、待っててってさくらが言ってくれたから。
期待していいってことだろ?
俺はそれを裏切りたくない。
待っていたいんだ。
「ハルがさくらのこと好きなのは知ってる。だけど、わたしもハルのこと好きなの」
知ってるよ、とはなんか言えなかった。
それは茜に対しての罪悪感とか後ろめたさとかそんなものがあったからだと思う。
「さくらより先に出逢ってさくらよりもハルのこと知ってる。そんな簡単に終わりにしたいって言われて気持ちが切り替えられるほど単純なんかじゃない」
それはそうだと思う、なんて思いながら全然理解なんてしてなかった。
「じゃ、せめて最後にもう一度抱いて…」
そう震える声でそんなことをいう茜に同情した。
だから、
「ホントに最後にしてくれるのか?」
こんな最低なことさえも口にしてしまったんだ。
茜が小さく頷いたのを合図に、触れるだけのキスを交わす。
段々と行為はすすみ、茜の甘い声が漏れる。