<side:快斗>

俺は物心つく前からアイツとはずっと繋がってた。

傍にいるのが当たり前で、アイツの存在がありがたいとかそんなこと思ったこともなくて、ただ…ずっと一緒にいると思ってた。

だけどいつからかアイツは年上で俺は年下。

兄弟に思われて、やけに年上面してくるのがムカついた。

俺が中学にあがるとアイツは高校生で、俺が高校にあがるとアイツは大学生。

3歳差がとても大きく感じた。

そんなとき、この気持ちは劣等感であり嫉妬であり、恋心の裏返しだと気づいた。

奏が好きだと。

だから離れた。

近くにいると何もかも奏に囚われたまま動けなくなる。

奏しか見えなくなる。

そう思ったんだ。

大学は一人暮らしでアイツと離れられるつもりだった。

だってアイツとは違う大学だったし。

なのにアイツは時間がある時にはいつもやって来やがる。

琉瑠が誕プレで赤いマグカップと黒のマグカップをペアで持ってきたと思うと、次の日アイツが写真たてを持ってきた。

しかも俺と2ショットのやつ。いつかの初詣で家族ぐるみで行ったときのだった。

何考えてんのか分からない。

何で2人で写った写真なんかを…でも、アイツは「快斗が寂しくないように」なんて笑うから余計に寂しくなった。

奏にとって俺は世話したくなるような心配したくなるような弟みたいな存在なんだなって思ったから。

でも、俺はその写真を見ては奏を思い出して胸が締め付けられるように苦しくなる。

奏以外とは付き合うつもりなんてない。

だけど、少しでも忘れられたら…そんなつもりで後輩に手を出してしまった。

「快斗先輩」っていつも笑顔で寄ってきてくれる部活の可愛い後輩。

そんな後輩に「身体だけなら付き合ってあげる」なんて、クソみたいなこと言ってしまったんだ。