<side:優斗>

部活の現役とOBの交流会で彼女を見かけた。

ちっちゃくて可愛らしい女の子の隣でハツラツと笑う彼女。

南雲茜。

後で知った彼女の名。

俺は一目惚れした。彼女の陽気さとか憧れてた。

だから、告白した。言わずにはいられないくらい彼女が好きになってたんだ。

だけど最初の印象とは違い彼女は冷たい態度だった。

本来こんなものだったのかもしれない、そう思うことで自分を慰めていた。

でもどうしても笑ってほしくて、あのハツラツとした元気いっぱいの彼女が見たくていつもいつもふざけていた。

どうすればいいのかわからない。だから俺にはふざけて大げさなくらいの態度をとることしかできなかった。

無理してるわけじゃない。

無理してるつもりなんてない。

だけど、茜のいる部屋の前で一回深呼吸してから入るのも、茜と会った後はなにもしたくないくらいの脱力感に襲われていたのも絶対に言わない。言えば無理してることになる。

無理してるわけじゃない。

ただ、茜の笑顔がみたいだけ。

それだけなんだ。

ほら、今日もこの扉の向こうに茜がいる。

大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出す。

よしっと気合いを入れて、今日は笑顔見れるかななんて思いながらドアノブを引く。

「あっかねー!今日も可愛いね~」

なんておどけて見せれば茜は、

「可愛くないよ。」

そう冷静な返事が返ってくる。

まぁ分かってたけど。

「可愛いよ~。茜は世界一可愛い!好きだー!茜はー?」

そんな問いかけにはいつも決まってるんだ。

「…わたしは愛してる」

笑顔もなく真顔で言われるその言葉は茜の決まり文句。

でも、それでも好きよりも嬉しい言葉に一人舞い上がり茜に抱きつく。好きとか愛してるとか言葉を並べ立てられてるだけだとしても茜に言われれば嬉しい。

ただ愛してるの言葉を聞くよりも笑顔が見たいなんて贅沢な欲求かもしれないけど笑顔が見れることの方が大事な気がするんだ。

いつになったら笑顔が見られるのか。

誰にも言えない俺の戦い。