「さくら、また待ってるよ」


お互いに同じ痛みを背負う者同士、気がついたらいつも一緒にいるようになった。



年なんて関係なく、後輩でも先輩でもないからってお互いに呼び捨てだ。


「じゃ裏から出る」


「それは…伝えろってこと?」


「………うん」


「わかった」


「…ありがと、優斗」



そうわたしは優斗が働くクリニックの事務職として働いている。


総合病院ってわけじゃないから優斗も定時で上がることがほとんどで、帰宅時間が同じになれば一緒に帰る。

その時間を見計らうようにハルがクリニックの外で待っている。


でも、会いたくない。

喋りたくない。

何も聞きたくない。


そう思うからいつも裏から帰って会わないようにしてる。

ハルもそれに気がついているのにほとんど毎日やって来る。


飽きないのかってビックリするけど、根性だけはあるんだなって思った。



優斗が一緒だったら優斗に頼んで追い返してもらう。

だけど、時間がバラバラだったら、もう帰ったと伝えて貰う。


放っておけばいいのにこんなにも構うのは

わたしが今もハルのことを好きだから。



だけど信じることがもう出来ないから会わない。

許すことができないから会えない。


優斗はそんなわたしを気遣って文句も言わずにハルに対処してくれている。