水泳部の先輩たちはたいていみんなわたしのことを“さくら”って呼ぶ。
なんかね、あだ名で呼ぶのがふつーみたいな。
みんなが“さくら”って呼ぶなか、快斗先輩だけが“サク”って呼ぶの。
それが凄く特別で、先輩以外に“サク”って呼ばれたくないし、呼ばせたくない。
そのくらい、わたしなかで“サク”って呼ばれることは大切っていうか、快斗先輩だけの特別な呼び方。
ぜったい誰にも呼ばせるものですかー!
練習が終わるとわたしの一番楽しみな時間が始まる。
先輩との、2人だけの時間。
ってそんなたいそうなものじゃ、本当はないんだけど。
ただ、わたしの家の方向と一緒だったのがたまたま先輩だけだっただけ。
それだけのこと。
特別な意味なんてないんだもん。
でも、わたしにしたらとってもとっても大切な時間なの。

