「…うそつき」

涙が止まらなかった。

幸村が自分の父親だったらどんなにいいか。
ずっとそう、思ってた。

玲子が、幸村が父親だって言った。
だけど、みんなそれを黙ってた。

玲子も、幸村も。
幸村は父親じゃないって、そう言った。

「うそつきうそつきうそつき!」

バタン!とドアを勢いよくあけて、一目散に玄関へと走っていった。

「幸姫!?」

しまった、という顔で、玲子が幸姫を呼び止める。
が、そんなことはお構いなしに、幸姫は玄関の鍵を開けて、外へと飛び出した。


なんで?なんでみんなだまってたの?
なんでおしえてくれなかったの?


ずっと父親に会いたいと思っていた。
父親と玲子、3人で一緒に暮らしていきたいと思っていた。


みんな、どうしてうそついたの…


「うわぁあぁぁぁ!」


後から後からあふれてくる涙が止まらなかった。
とにかくひたすらに、幸姫は走った。