「ジョー…?」

フランシーヌの声がした。

同時に、右手からすっと重みが消える。

彼女は、ジョーの右手を握りしめたまま、うたた寝をしていたのだ。

「やぁ」

ジョーは、今にも死にそうな顔をしている少女に笑いかけた。

「ど…して、笑うの?」

フランシーヌの、ゆらゆら揺れる双眸から、大粒の涙がパタパタとジョーの頬に落ちた。

「君が、かわいいから」

冗談とも本音ともつかない台詞を吐いて、ジョーは、なおもノーテンキに微笑んだ。

「ごめんなさい! あなたが、そんなに傷ついてたなんて…。時間が視えるってことが、そんなに辛いことだなんて…。あたし、あなたの苦しみ、わかってなかった…。こんなつもりじゃなかったの。人類が滅びたがっているなんて、信じてほしくなかった…それだけだったの…」