――ドコからか響いてきたのは
携帯の震える音。


俺は頭まですっぽりと
掛け布団の中にぐちゃぐちゃに包まり

思考回路が停止したまま
無意識にそこから腕だけ伸ばして
音のありかを探る。


フローリングの床の上で
繰り返し行われる振動。


さまよった手が
ひそかに携帯に触れたところで
その動きが止まった。


……切れた?
んだよ……。

あーーま、いっか。


すぐにどうでもよくなって
反対側に寝返りを打ち
身体が欲求するままに
再び意識を暗闇の中へ。


ウトウトとなりかけた時
背中の方で再び携帯の振動。

さっきと違って今度はすぐに音がやんだ。


……メールか。

でもきっとろくな内容じゃない。
カズマかケンゴかはたまた別の奴か。

後で見ればいっか。


…………。


さっきからどれぐらいの時間が
経過したかわからないけど
妙な胸騒ぎとも言うべきか
何となくほっとけなくて目が覚めた。


誰だったんだ?
さっきの電話とメール。


まだ寝転んだ体勢で半分だけ目を開けて
床に視線を送る。


身体がどうしようもないぐらい重い。


これは別に
昨日雨に打たれたからでもなく
ライブの後の打ち上げのせいだ。


あのライブの後俺らは
各出演者や友達らと打ち上げに行き
ありえないぐらい
飲んで飲んで飲みまくった。


ぶっちゃけ途中から記憶がおぼろげだし。


べろんべろんに酔っ払って
松さんの彼女に
メンバー全員送ってもらって
(最初はもちろん遠慮したけど
半ば強引に車に拉致られた)

自分の部屋のベッドに飛び込んだのは
すでに空が明るくなってた時間だった。

カーテンも閉めずに眠ったから
薄目を開けた目に
差し込んできたオレンジ色は
多分夕日かなんかだろう。


……って何時間寝たんだよ。


携帯を引き寄せて顔の前で画面を開いた。