「ほらリョウ何か言えや」


ライブ前の恒例の気合い入れ。

ラストスパートの如く
DeFautが魂のパフォーマンスをする中
俺ら全員ステージ袖に円になって立つ。

もちろんアキも一緒だ。


「ほら西条恥ずかしがってないで」


にやけ顔のカズマの言葉に
アキは怖ず怖ずと
小さな手の平を差し出した。

全員の手の平が重なったところで
俺は深く息を吸い込む。


「え〜不思議な成り行きで
俺らが今日のトリです。
DeFautの後とかかなりの緊張ですけど」

「お前のせいやろが」

「何で敬語?」


ケンゴとケイタの突っ込みは
モチロンシカトする方向で
俺は一つ咳ばらいをする。


「ついでに一曲目はぶっつけ本番だけど
……まぁアキがいるんで
大船に乗ったつもりで」

「ぷっ!お前が言うなよ」

「何で私なのよ。
今日加入したばっかで
変なプレッシャーかけないでよ」

「だってお前
Club Codeでも同じような経験したんだろ。
そう言った意味では俺らの先輩だろ」

「なん、でその話」

「さあな、俺の情報網なめんな」


あっこのセリフは
ケンゴの十八番だったっけか。


それにしてもやっぱあの演奏
リハなしだったのか。
半分カンだったけどよかった当たってて。

そんな事を考えながら
いつもの逆襲をするべく
話をケムに巻いた俺を
アキは悔しそうに睨み付けた。


「ほらそこイチャイチャすんなや」


からかうように言ったケンゴの背後で
今日めちゃめちゃ世話んなって
暫くは頭が上がらない
存在になるであろうユリが

壁に寄り掛かって腕を組み
「緊張感全然ないわね」と
呆れたように呟き

彼女の隣に立つタケが
「うはは、そうっすね」と
楽しそうに笑うのが見えた。