5月29日 土曜日PM4:17

ライブハウス
COUNT ZERO搬入口前....


「雨ふりそうだな」


駅から会場まで4人揃って歩いてる途中
厚い雲に覆われた空を見ながら俺がぼやくと
速効ケンゴの突っ込みが入る。


「なんや、せっかくのライブの日に
雨降ったらテンション下がるって?
晴れたって雨降ったって
西条が来るかどうかは彼女次第やろ」

「んなの、わーってるよ」


でもさ、やっぱ勝負の日は
カラッと晴れて欲しいじゃん?

湿気で楽器のコンディション変わるし。


すると俺の前を行くケイタが
クルリと後ろを振り返った。


「反対にケンゴは嬉しそうじゃん?
むしろ雨降ったほうがいいみたいな?」

「おん、どっちかっていうとそやな」

「えー?何でだよ。
天気予報じゃ
かなり激しく降るっぼい事言ってたし
客の足鈍るじゃねーか」


俺と同じように空を見上げたカズマが
不思議そうに尋ねる。

おう、賛成!
カズマ、珍しく意見が合うじゃねーか。


「やってそうなった方が
冷やかしみたいな半端な客
来んくなるやろ」


オイオイ。
ちょっとまてよ。


「ケンゴてめぇ、
俺らはまだ客選べる立場じゃねーから。
ふざけた事ぬかしてんじゃねーよ」

「んあ?
キャーキャーゆうて
ろくに曲も聞かんような客なんか
おんほうがマシやろうが!」


確かにケンゴの言う事も一理ある。

でも最初はどんなきっかけであれ
そのうち曲の方も好きになって
くれっかもしんねーし。

きれいごとかもしれないけど
客に対して上目線ではいたくない。


再びケンゴに食ってかかろうとしたら
目ざとく気付いたケイタとカズマが
俺らの間に割り込んできた。


「ハイ、ストップ。
お互い気が立ってるからって
ライブ前に余計な体力つかうなよ」

「そうそう、そんな熱くなってたら
上昇気流が発生して
ますます雨降るだろうが」


もっともなケイタの言葉と
訳わかんないカズマの言い分に
少しだけ冷静になって
興奮した頭を落ち着かせる。